443 飲みたかったんじゃない。酔いたかったんだ
一番奥底にあったのは、悔しいんだが
アダルトチルドレンであったことだろう。
「であった」どころじゃない、どの書籍や専門書を読んでも
俺は典型的なアダルトチルドレンだった。実は結構ショックだった。
俺は幼いころによく母親から「笑うな」「はしゃぐな」「嬉しそうにするな」
「楽しそうにするな」とずっと言われて育った。「恥ずかしいから」だそうだ。
日によって機嫌が異なり、両親の折り合いも最悪な中で育った俺は
人の顔色を見ることによってのみ居場所を見つけていたように思う。
唯一そんなことを考えずに済んだのはドラムのことを考えている時間だった。
大人になり、酒を覚えた俺は信じられない勢いでドラムにのめり込み、
お陰でそうそう簡単ではないと言える結果を出し続けてきた。
その後辺りからか。飲み始めたのは。
20代後半だったと思う。もう後の妻と交際していた。
当初は何ら問題ない飲酒だった。それは生活も同様だ。
老舗楽器メーカーの札幌営業所に勤務し、結婚し家を買い、
一人息子も生まれた。幸せの絶頂は結構長く続いた。
躓き始めたのは楽器メーカーの業績不振だ。
20年近く共に勤務してきた上司から辞職を打診された
日のことは忘れない。泣けたし、これからどうするかで狂いそうだった。
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狂っていたのかもしれない。
独り東京に出て、家族に寂しい思いをさせ、経済的にも迷惑をかけた。
もうその頃は立派なアルコール依存症だったと思う。
札幌に戻った俺は、24時間ずっと追いかけられていた。
ミュージシャンとして体の障碍が及ぼすダメージに、
独立して数年後からの業績の悪化に。家族を支える過剰な力みに。
飲まないでいることが出来なかった。
毎日のように届く請求世に目もくれず飲んだくれる。
飲んでいないと現実を見なければならない。見たくないんだ。
見てしまったら終わりだ。
ずっと酔っていなければならなかったんだ。
その後時間をかけて一つずつ片付けてきた。
ほとんどが元妻の発案だ。2020年、昨年1年ですべてが変わった。
酒を断って14か月になる。
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