446 酒をやめる気なんてなかった:その1
家族一緒に暮らした最後の家、清田の一軒家を出た。
元妻は近郊の実家へ。息子は清田の素敵なアパートへ。
俺は南平岸のマンションへ。
当時は毎日飲んでいる真っ最中だ。離婚とは何か、
独りになるとはどういうことなのか、何も分からずに
ただ毎日飲んでいた。引っ越し荷物もそのままに。
頭では一か月後から長期入院とわかっていた。
俺はノートPCを整備し、外付けHDに仕事のデータを
全て格納した。メーラーもthunderbirdをインストールした。
入院中に仕事が出来るようにと。ちょうど新規案件もあった。
それ以外はずっと飲んでいた。開けてない段ボールが散乱し
まさに足の踏み場に困る部屋で、ただひたすら飲んでいた。
飲んでいるから孤独感も悲しみもない。感情がなかった。
どうせ一か月後から長期入院だ。もうどうでもいい。
そんなある晩、俺は泥酔してベッドに倒れ込んだ。
手をついた場所がベッドのエッヂから外れており、
俺は顔面からゴミ箱に全体重を乗せて突っ込んだ。
右目の周囲、顔半分が円形に黒ずんだ。すさまじい痣だ。
当たり所が数センチずれていたら失明していただろう。
入院まで後2週間。俺は冷蔵庫に食材を残さないように
処置しながら食事をとっていた。生ものは納豆と卵だけ、
後はふりかけ、海苔の佃煮だ。毎日毎日このメニューだ。
メシなんてどうでもよかったんだ。
何なら食わなくたってもいい。生きる骸だ。
俺は何も考えず、ただ入院の日を待った。
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