ネクスト杉山

余りに大きな犠牲を払ったが、ようやくアルコール依存症を乗り越えたドラマーの、明日への布石

救われた精神

入院中。高校時代から付き合いのある
ミュージシャンとメッセンジャーだ。

近況報告や現況を送りあう。
ミュージシャンへの復帰を問われた俺は
素直に伝えた。

やはりドラムを叩きたいということ。
バンドの心あたりもすでにあること。
だが以前のようなハードでヘヴィー、
しかもテクニカルなドラミングは到底
望めないが、カクテルドラムなら
行けるのではないかと。彼はモノを
見せてくれという。俺はカクテルドラムの
画像を送信した。

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サウンドハウスで価格を調べた。
彼は言った。

「これ、買うわ。んでお前のとこに送る。
言っとくけど俺のだからね?ずっと貸して
おくだけだよ?所有権は俺ね」

!!!!!!!!!

こんなことって普通考えられない。
俺は考えに考え、申し出を受けることにした。

退院は10月1日、わずか二日後、3日には
ホームにしているスタジオにセットが届いた。
TAMA Cocktail Jamである。その日俺は
スタジオで開梱、セッティング、器材庫へ
格納する作業を行った。

涙が出そうだった。このセットと共に
俺は音楽をやるんだ。精一杯の音楽を
やることが、届けてくれた彼への何よりの
恩返しになると思ったのだ。