197、父親になった俺
平成六年、息子が生まれた。
陣痛から破水、分娩に男の出番はない。俺は分娩室のドアに額を押し当てて神に祈った。母子の無事を祈った。
生まれた我が子のかわいさは一体なんだろう。もともと仲が良かった夫婦は我が子の誕生でますます仲良くなった。
当時は楽器メーカーに勤めてドラムの講師もやっていた。大金持ちではないがそれなりに安定していた。
幼稚園~小学生は本当に自慢の父だったと思う。まず見た目が同級生の親と違う。こちとらミュージシャンなので。
長じて息子はギターを始めた。親として本当に嬉しかった。いつか同じステージに立とう、そんな想いがあった。
息子が大学生の頃から俺の状況が悪化して行った。後はご覧のとおりだ。
あの憧れの父さんはどこに?
ごめんよ、悲しい思いをさせたね。やっと心身が治りつつあるんだ。今日ね日を笑い話に出来るように、しっかり治すよ。そしてまた、自慢の父になって見せる。もう少しだ。待ってて欲しい。
父さんはまドラマー杉山だから。