理由がわからない依存症
アルコールはもちろん、処方薬、ギャンブル、買い物、
性行為、盗癖、、あ、覚せい剤は除く。あれは体依存。
例えばアルコール。よくある例を。
飲み始めは20歳前後で、ゆっくりと酒量が増える。
5年10年かけて酒量が増える。やがて毎日の飲酒が
習慣となり、飲まずにはいられなくなる。
その間も酒量は増え続ける。休日は日中から飲む、
時折荒れることも見られるようになり、吐いたり
何でもないところで転んだりするようになる。
昼の隠れ飲みはやがて平日にも行われる。
仕事や家庭が徐々に壊れて行く。人の心が離れる。
ついには酒を買いに行く以外、部屋から出なくなり、
幻覚、幻聴、けいれん等々日常生活は送れなくなり
精神病院への入院を余儀なくされる。
彼は不幸だったのか?何かから逃げていたのか?
必ずしもそうではない。特に不満もなく生きて来たんだ。
幸不幸に基準も境界線もない。
あるのは当人の認識だけだ。
全く同じ体験をしても
それが大喜びの人もいれば
大不幸で自死してしまう、
そこまでの差があるんだ。
ということは?
上記に挙げたアルコール依存症患者が味わってきた
日常は平凡でも何でもなく、その人にとって唯一無二だ。
その中には「二度と思い出したくないような思い」も
あって当然である。いくつもいくつも。
酔ってさえいれば、その認識から逃げ出せる。
酩酊が及ぼす万能感覚が、一瞬でも忘れさせて
くれる。その快感は時間を経るにしたがって
より強い効果を求める。イコール、酒量は増える。
絶対に増える。減ることは絶対にないんだ。
俺は「俺のすべてだったドラムが叩けなくなった」ことが
きっかけで「生きている価値などない」「死んだほうがいい」と
決めつけ、酒害にまみれた。だが、そんなはっきりとした
原因がある患者ばかりではなく、市井の普通の人々が
アルコール依存症になってしまう危険性はすぐ横にある。