ネクスト杉山

余りに大きな犠牲を払ったが、ようやくアルコール依存症を乗り越えたドラマーの、明日への布石

80、息子の心は

赤ちゃんの記憶があるんだ。
お父さんの部屋にハイハイして
入って行ったら、面白そうな
形の物があった。触ると不思議な
感じの音がした。お父さんは
いつになく厳しくさわっちゃダメって
言ったのかな。とにかくお父さんの
大切な何かなんだと言うことが
分かった。そんな記憶があるんだ。

何年後かな、あれはギターだと分かったのは


物心付いてからずっとお家も車の中も
音楽があった。お父さんはドラマーとして
生きて来たことも分かった。


僕は何故かギターを選んだ。


音楽を知れば知るほどお父さんの
力量、センス、技術が分かった。
だからドラムは選ばなかったのかな。

何度も一緒に音を出した。
楽しくて嬉しくて、大切な時間を共にした。

俺がこの家に産まれて本当に良かった。
だから、一人で東京に行ったのが
淋しかったんだ。たまに帰って来るのが
何より楽しみだったんだ。

札幌に戻って来たことが嬉しくてね。
またあの楽しい毎日が戻って来るって。


いつの間にか、お父さんの調子が
急激に悪くなって行ったのは何故なんだ、
輝いていたあのお父さんが、無惨に
崩れて行く姿は悲しかった。
お母さんもどんどんあの朗らかな
笑顔が消えて行ったのが悲しかった。

何年もお母さんは、なんとかお父さんの
力になろうと一生懸命だったわ。
そんなお母さんの心を知ってか知らずか
お父さんはますますダウンするんだ。

救急車で暴れ姿。
血だらけでうめく声。
寝ては飲む日々を覚えてる?
どれだけお母さんが泣いたか知ってる?


ドラマーとして光っていたお父さんは
どこに行ったんだろう。今ここで
乱れてるのは本当にあのお父さんか?

結局、離婚になったね。

なぁ、頼むよ、お父さんはこうじゃない、
こうじゃなかったはずだ!
もっと音楽を、人生を教えてくれよ。
俺はお父さんが自慢だった。
また音を出そうってこと。やろうよ。

待ってるから



、、、、、  かな