444 思い出は美化される - ネクスト杉山

と言うよりも、美しかったことばかりを思い出すんだ。

本来そんなそんなキレイで素敵な日々だけなんて
そんなわけあるはずもない。

ある日は酔って前後不覚となって
家族に迷惑をかけただろう。

飲酒運転で逮捕され、留置場で過ごした
一晩だってあったじゃないか。

なのに、なぜ良かったことばかりを思い出すんだろう。

しかも、その瞬間後にはもう悲しみや孤独感に襲われる。
それは、多分「楽しかったあの日：そうじゃない今」だ。

記憶の中から、甘美だったことばかりを抽出して
今との違いに嘆いたりする、こんな非生産的なことはない。
理屈ではわかってるんだが、俺はまだそこから脱していない。

そんな不毛な場所から抜け出さなくてはならない。

そのために、今日も一人スタジオだ。緊急事態宣言で
バンドリハ―サルが出来ないので、これを千載一遇の
チャンスととらえ、増えに増えたパーカスやシンバルの
セッティングを研究してきた。見えてきたものがある。
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この研究作業の最中、すさまじい体力と精神力が必要なのだが
全然疲れないんだ。そして俺を襲う悲しみも孤独感も吹っ飛ぶ。

色んな手段はあるだろう。
でも今のところ、俺にとって
音楽が、バンドが、ドラムが
「美しかった過去以上の今」を
自力でクリエイト出来る手段だ。

何も「今がダメだから過去に思いをはせる」と
決めつけているわけじゃないんだ。ただ単に
「思い出は美化される」と言うこともあるだろう。
それにしたところで、俺にとっては鬱を呼び込む要因なんだ。

勝ち得なきゃならないんだ。絶対に。だから、考えられないような
集中力で俺はドラムセットに向かい続ける。