何から逃げるのか
俺の場合は何度も書いているようにはっきりしている。
糖尿病に起因する末梢神経障害で、両手両足が
ドラマーとして全く思うようには動かない状態となり、
せっかくメジャー(徳間ジャパン)から1stアルバムの
発売に至ったREDのツアー終了後にドラマーを引退した。
その頃に前後して仕事への意欲も薄れ、
何をもする気になれず、気が付いたら連続飲酒の
典型的なアルコール依存症になっていた。
ドラムを叩けない俺には存在価値がない。生きる意味がない。
そんな自分を見たくなかった。認めたくなかった。
酔っていればその現実から目をそらすことが出来る。
おれはそこに頼っていた。唯一の逃げ場だった。
つまり、その原因を好転化して初めて断酒が可能になる。
だから俺は退院するや否や、主治医の命にも従わずに
即座にバンドを始めたんだ、CEDROCKである。
今だからそれが良くわかるんだが、酒害中は
全然わかっていなかった。と言うか判るも判らないも
何もない。とにかく飲めないのは一大事であり
手元に酒がないと不安でたまらず、時間や状況を
考えずに買いに走った。
良くいるサラリーマンが連日の飲み会で癖になり、
やがて休日には自宅で朝から飲むようになり、
気が付いたら異常な連続飲酒になっている。よくある。
当然これはアルコール依存症だ。だが本人はもちろん
家族もそれが病気であることを認めたがらない。否認だ。
そしてこの彼も逃げている。仕事から、理想の人生から、
家族から、欲から、本音から、逃げているんだ。
だから飲むんだ。そんな依存症患者に断酒を進めようと
酒を取り上げようと、絶対に酒を止めることは出来ない。
何から逃げているのか。
その根本に正面から向き合う。受け入れる。
つまり生き方を変えるんだ。
今までのように酒でごまかして
見ないようにして来た自分に向き合うんだ。
生き方を変えるんだ。
俺はたまたまそれが間に合ったようだ。
だが結局間に合わず、死んでゆく患者もかなり多い。