321 隔離部屋への収容
ケースワーカーとは1:1で、面談室で今後の生活方針、
障害三級をどのように暮らしに役立てるかなどの必要な
話があった。コロナ禍であり、双方マスクをしているので
俺は油断していた。まぁ油断していなくても相手はプロだ。
バレて当然だった。むしろよくまぁ10日間もバレなかった。
ケースワーカーの通報で、モノの30秒で5人の看護師が
面談室になだれ込み、俺は腰にロープを巻き付けられ
二重三重ににかぎがかかる隔離部屋、通称ガッチャン部屋に
収容された。
向かい合って2部屋ずつ、計4部屋の構造だ。
ドアは外側からしかカギをかけられず、内側には
ドアノブもない。覗き窓が背の高さに合わせ
縦3センチ、横10センチくらいで作られている。
なおその覗き窓には針金入りの措置があった。
隣は男、常時怒りの叫びをあげている。
向かいは老女、飲酒で錯乱し包丁を振り回し、
家族の通報で警察により搬送されてきた。
部屋の中。天井は恐らく3m以上の高さがあった。
その高い場所に明り取り入れの小窓があり、
その窓に向かって無数の爪跡が残っている。
部屋の壁には一切の突起物がない。ペンも紙も
満ち込めない。本もノートもダメだ。自殺防止である。
部屋の中央に布団は敷かれ、部屋の四隅、天井に
監視カメラがある。ちょっとでも異常な行動をとると
看護詰所から音声が入り看護しか飛んでくる。
そして部屋の中にトイレがある。ドアはない。
開け放しのトイレだ。トイレットペーパーは
進を抜いてある。同じく自殺防止だ。
読むもの、書くもの、聴くもの、見るもの、
話し相手、何一つないんだ。唯一部屋のドアが
空けられるのは3度の食事の時だけなのだ。
ドアを開けられ、小さな机といすで
食事をとる。無言だ。だが向かいの老婆は
この環境にずっと文句を言っている。
ここから出せと暴れている。看護師は無理やり
でようと暴れる老婆を軽々と押さえつけ、
部屋に投げ飛ばす。俺は小さなの域窓から
その動きをずっとみていた。
予定では3泊。まさに「本当に発狂」しそうだ。
部屋の中央、布団に座り込む。おれは否応なしに
自分に向き合うしかなった。
俺自身の人生。
妻の人生。
息子の人生。
仕事。音楽。人の笑顔。
俺のやったこと。やらざるを得なかったこと。
その結果何が起こったのか。誰を不幸にしたのか。
その原因は何か。なぜ自分はこうのったのか。
俺にとって家族とは何だったのか。
俺にとって音楽とは何だったのか。
誰が壊したのか。
沢山の本を読んだじゃないか。自分に当てはまることも
沢山あっただろう。第三者の目で捕えてみるんだ。
お前は一体誰だ?
結果的にこれが内観になった
その結果、3日間はあっという間に過ぎた、
三日目、先生が迎えに来て元の病室に戻った。
俺はこの瞬間に、今後一生涯
酒を飲まないと決めた。